自分で投資信託やETFを組み合わせて作る“自作バランスファンド”。

その運用においてよく言われるのが「リバランスの重要性」です。

でも本当にリバランスは必要なのでしょうか?

今回は、2010年〜2024年のデータをもとに、リバランスの効果と、最適なアセットアロケーションについて徹底検証します。

自作バランスファンドとは?

自作バランスファンドとは、市販のバランスファンドに頼らず、自分で複数の投資信託やETFを組み合わせて運用する方法です。

手数料や配分を自由に調整できる反面、管理や見直し(リバランス)の手間がかかるのが特徴です。

自作バランスファンドについては、別記事で詳しく解説しています。↓↓

アセットアロケーションを分散するメリット・デメリット

まずは分散して投資をするメリットとデメリットを確認してみましょう。

メリット

  • リスク分散:値動きの異なる資産を組み合わせることで、価格変動リスクを抑えられる
  • 安定した成績:どれかが不調でも、他の資産が補完することで全体の成績が安定しやすい
  • 地域・資産カテゴリの偏りを防げる:先進国・新興国、株式・債券・不動産などにバランスよく投資できる

デメリット

  • リターンの最大化は難しい:高成長資産(例:先進国株)を単体で持つよりリターンが平準化される
  • リバランスが必要になる:定期的な比率の調整が発生し、手間やコストがかかる

リバランスはなぜ必要か?

リバランスの必要性を考える女性

リバランスの3つの役割

アセットごとの配分は、市場の変動で徐々に崩れていきます。

リバランスはこのズレを修正し、元の比率に戻す作業で、役割は次のようなものになります。

  • “高値売り・安値買い”を半自動で行う仕組み
  • リスクを一定に保つハンドル
  • メンタルブレーカー(暴落時の動揺を抑える安全弁)

特に重要と言われているのが、①の“高値売り・安値買い”を半自動で行う仕組みです。

リバランスで”高値売り・安値買い”はできる?過去の成績を確認!

主要な8つのアセットクラスの過去の成績をみてみましょう。

下の表は、2010年から2024年までの、主要8アセットの年ごとの成績です。

赤背景はその年に最も成績がよかったアセット青背景最も成績が悪かったアセットです。

日本株
(ニッセイ日経225)
国内債券
(ニッセイ国内債)
J-REIT
(IF Jリート)
先進国株
(SMTグローバル株)
先進国債券
(SMTグローバル債)
外国REIT
(日興グローバルREIT)
新興国株
(SMT新興国株)
新興国債券
(SMT新興国債)
2010-1.601.88 32.69-2.13 -12.565.984.10-1.73
2011-15.931.81 -22.52-9.590.89-2.30-21.86 3.30
201225.25 1.29 40.4929.5619.1835.7430.3429.36
2013 58.69 1.4040.6953.1121.5322.9317.5310.48
20148.66 3.7529.2322.6816.26 42.8711.6219.84
20159.270.7112.490.150.44 15.19 -13.83-8.95
2016 -1.861.29 21.432.407.4012.178.855.66
201720.10 0.1020.5119.054.216.56 27.065.11
2018-12.660.15-10.57-12.30 2.33-8.69 -16.09-6.27
201918.20 1.1318.27 28.547.6327.2717.6513.15
2020 15.891.21-8.7712.179.72 -9.199.144.36
20214.36-0.5226.96 27.22 -5.4726.78-2.14-4.12
2022-9.25 -0.57-4.71 -17.53-11.94-11.39-15.07-5.26
20238.47 1.1618.03 24.347.6713.934.6213.43
202419.93 2.5811.14 20.664.1610.467.5110.90
データ参照:モーニングスター:https://ibbotson.co.jp/

こうしてみると、成績のいいアセットクラスと悪いアセットクラスが年によって違うことがわかりますね。

つまり、成績の良かったところを売却し、成績の悪かったところに再投資することが重要なのです。

過去の成績からリバランスの効果を検証!

8資産均等に投資した場合の成績は?

では、実際に上記8資産に分散投資したとき、どれほどの成績を収めることができたのでしょうか。

前提条件
  • 2010年から2024年までの15年間を投資期間とする
  • 2010年に8資産にそれぞれ同額投資する
  • リバランスは年末に行うと仮定する

”リバランスあり”と”リバランスなし”で、2010年から15年間投資をした結果は次のとおりでした。

ケース年率リターン年率リスク最大ドローダウン
リバランスあり7.85 %9.33 %-21.46 %
リバランスなし8.86 %10.81 %-28.09 %

なんと、年末にリバランスすることで、年率リターンが減少する結果に。

一方、年率リスクはリバランスすることで約1.5ポイント、最大ドローダウンが約6.6ポイント低下しました。

最大ドローダウンとは

運用期間中に記録した「最高値から最安値までの下落率」のうち、最も大きいもののことです。

簡単に言うと、どれだけ資産価値が凹んだかを示す “最悪ケース” 指標です。

2024年までの15年間は、リーマンショックやコロナショックがありながらも、相場は上昇トレンドにありました。

このような場合、リバランスをせず、トレンドに乗り続けることがリターンを伸ばすのには適しているんですね。

リバランスのタイミングで成績は変わる

年1回のリバランスではなく、より良いリバランスのタイミングはないのでしょうか。

次の表は、5つのパターンでリバランスを行った結果です。(2010年~2024年)

戦略年率リターン年率リスク最大ドローダウン
年1回リバランス7.85 %9.33 %-21.46 %
半年リバランス7.59 %9.32 %-21.46 %
四半期リバランス7.40 %9.48 %-23.69 %
±5%バンド7.88 %9.49 %-22.77 %
リバランスなし8.86 %10.81 %-28.09 %

リターンとリスクを考えると、年末1回のリバランスで十分であることがわかりますね。

年1回というわかりやすいところも、おすすめポイントです。

±5%バンドとは、各アセットクラスのうち、どれかが12.5%から±5 %(7.5~17.5%)になったときにリバランスするものです。

±5%バンドのほうが年1回のリバランスより年率リターンが若干いいものの、常にパフォーマンスを確認する必要があることを考えると、割に合わないかもしれません。

年末1回のリバランスは、年率リターンも比較的高く、リスクや最大ドローダウンが低いのでおすすめです。

最適なアセットアロケーションはどれ?

8資産に均等に投資するのが最良かといえば、決してそうではありません。

リスクが高まるものの、株式を多めにすればリターンは高まりますし、債券を増やせばリターンは減るもののリスクも減少します。

では、リターンを最大にするアセットアロケーションは何なのでしょう。

2024年までの15年間で最適なアセットアロケーションは「先進国株式100%」

元も子もないのですが、2010年から2024年の15年間で、最大のパフォーマンスを達成したのは先進国株式インデックス1本に100%投資した人でした。

その年利リターンはなんと13.31%!

年利リスクは19.94%と非常に高いものでしたが、リスクに見合ったリターンがあったわけですね。

とはいえ、これは米国を中心とした先進国株式が長期上昇トレンドだったことが理由で、今後も同じように伸びていくかはわかりません。

バランス志向の配分はこれ!

もう少し、最適なアセットアロケーションを探っていきましょう。

8資産を使い、リターンとリスクのバランスを考えると、以下のようなアセットアロケーションがおすすめです。

  • 日本株:23.9 %
  • 国内債券:10.1 %
  • J-REIT:4.7 %
  • 先進国株:30.2 %
  • 先進国債券:12.8 %
  • 外国REIT:7.5 %
  • 新興国株:8.6 %
  • 新興国債券:2.2 %

年率リターン10.51%、年率リスク12.46%になりました。

かなりバランスのいい分散ができていますね!

ただし、この結果は2010年から2024年の15年間の成績を元にしていることに注意してください。

もーもーバランスファンドのアセットアロケーションの成績は?

ちなみに、私のアセットアロケーションは以下のとおりで、2010年に投資をした場合、年率リターン8.8%、年率リスク16.46%の結果だったことがわかりました。

少しリスクが高いわりにリターンは平凡…といった結果でした。

日本株:45%、J-REIT:5%、先進国株:25%、先進国債券:5%、外国REIT:5%、新興国株:10%、新興国債券:5%

よくある疑問(Q&A)

よくある疑問(Q&A)を開いて確認する
リバランスは何年に1回すれば良い?

一般的には「年1回」や「±5%バンド」などがありますが、自分の投資スタイルに合ったタイミングが大切です。

リバランスによって税金はかかる?

課税口座では売却益に課税されます。

NISAなどの非課税口座では非課税です。

アセットアロケーションは途中で変更しても良い?

ライフステージや相場環境によって見直すのは理にかなっています。

自分なりの最適なアセットアロケーションを、試行錯誤しながら探してみてください。

自作より既存のバランスファンドの方が良い?

管理の手間は少ないですが、コストやアセット内容に妥協が必要です。

比較して選びましょう。

2024年以降も同じアセット配分が通用する?

過去実績からの逆算では限界があります。

あくまでも参考にしつつ、将来の市況に応じて柔軟に調整する視点が大切です。

まとめ:リバランスとアセット配分の「自分なりの最適解」を見つけよう

今回は、自作バランスファンドを作るにあたって、リバランスの必要性の再確認と、最適なアセットアロケーションを過去の成績を元に検証しました。

その結果、わかったことは次のとおり。

  • 過去15年のデータでは、リバランスは必ずしもリターン向上に貢献しないが、リスク抑制には有効
  • 配分次第でリターンとリスクのバランスをコントロール可能
  • リバランス方法としては年1回で十分

ただし、これらは過去15年の成績を元にした結果であり、今後も同じではありません。

安定感や安心感を持ちつつ投資をしたい場合は、リバランスや複数のアセットを加えることが効果的であることも事実です。

自作バランスファンドのいいところは、自分のリスク許容度や期待するリターンに応じてアセットアロケーションを設計できるところです。

自分なりの「最適解」を見つけて、長期的な資産形成に活かしてみてくださいね!

※本記事は特定の投資助言を目的としたものではありません。
 投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。